アクアパンクの作者 LO にインタビュー


今回は『アクアパンク』の女性クリエイター、LO にインタビュー!影響を受けた作品や画家の話のほか、日米ロボットジャンルの違いについても考察を聞かせてくれました。

Q. 『アクアパンク』の制作はいつ頃から?

A. 現在進行中の形では、2008 年頃から制作を始めた。元はといえば、高校の頃にトールキンのリバイバルがあって、オリジナルの言語を作るのにハマっていたのね。で、その言語を中心に展開する世界の物語を書きたかったんだけど、それを文章でやるのは難しかったので、そのアイディアは見送った。大学で思いついた新しいアイディアが、今の『アクアパンク』。

Q. トールキン以外に『アクアパンク』の制作に影響を与えた作品はありますか?

A. 『バトルスター・ギャラクティカ』と『グレンラガン』かな。メディア作品の中で一番影響を受けたと思う。SF ジャンルは『スターウォーズ』や『スタートレック』だけじゃないと教えてくれたし。

(『バトルスター・ギャラクティカ』では) 誰もがサイロンである可能性があるっていうアイディアが好きだった。誰もが敵、 もしくは敵とみなされた者である可能性ね。「敵とみなされた」、っていうのは、実際に彼らが敵である証拠はどこにもなかったから。誰が善人で悪人なのか、とても考えさせられた。

(注:『バトルスター・ギャラクティカ』は2004〜2009年に放映された SF テレビドラマ。オリジナル版は1978年に放映。)

Q. 『バトルスター・ギャラクティカ』を観ていて、昔の映画『ボディスナッチャーズ』を思い出しました。敵が人間の振りをしていて、誰が敵なのかわからないという。

A. 『ボディスナッチャーズ』は観た事がないけれど、内容は知ってるわ。

友達とよくメカジャンルについて考察するんだけど、ロボット以外にも繰り返し見るテーマは何かなって考えた時、『ボディスナッチャーズ』は「(魂の) 乗り物としての
体」という意味で、ロボットものと言えると思う。この場合、「体」は単に何らかの目的を果たすために使われる殻だから。

Q. 日本のアニメではロボットものというと、中にパイロットが乗り込んで操縦しますが、アメリカでは『トランスフォーマー』や『インターステラー』の TARS のように、ロボットが人格を持つキャラとして登場しますね。

A. それは文化的な興味深い違いだといつも考えているわ。昔どこで読んだか忘れたけど、日本人は意思を持って動くロボットにあまり興味がなく、逆に欧米では好まれると読んだ事があって、それが深く印象に残っている。

日本では、ロボットが侍の鎧や武器の延長なんじゃないかな。侍の鎧や武器は名前や特殊な能力、物語を持っていて、魂が鎧や剣に宿っているっていう……アニミズムの一種ね。人格を持つ人物じゃなくても、すでにキャラとして確立されている。

Q. 確かにガンダムがそうですね。人格がなくても、名前や特別な武器、能力を持つキャラクターとして人気を博している。

A. 西洋では例えばアーサーの剣エクスカリバーがあるけれど、数は少ない。あと、西洋人がロボットに人格を求めるのは、脅威の対象にしやすいからじゃないかな?アニミズムが恐れられているんだと思う (笑)。世界観の違いね。チーズは (魂の宿っていない) ただのチーズであってほしいっていう (笑)。

Q. 『アクアパンク』で意思を持つロボットキャラにあたるのは石の体を持つ「忠義の民」ですが、彼らが虐げられている理由は?

A. 「忠義の民」はどこから来たのか、誰に操られているのか、すべて謎に包まれているので、下層階級として扱われている。彼らは社会がこれまで創ってきた秩序を乱す存在。「忠義の民」が現れる前は何もかも解明され、人の居場所や魂の行き先まで支配下にあったのに、「忠義の民」がある日急に生を得た。しかも操ることができない。

アクアパンク

Q. 「忠義の民」である主人公のコーロンは、自分が受ける扱いに疑問を持ち始める。

A. そう、主人公は見える力と見えない力の両方に背を押されて、酷い扱いを受けていることに気付き始め、何とかしなければ…と考え始めるけれど、彼に一体何ができるか? それが1巻の話ね。

Q. 『アクアパンク』はウェブコミックなので、1ページずつ更新されますが、絵を描く時点では、本で見開き状態になったときのバランスを考えて描いているのでしょうか?

A. ページを隣り合わせて見てみないと難しいけど、なるべくそうしている。サムネイル (ネーム) を描く時に、前のページとのバランスや、レイアウトのバラエティを考えながら描いているわ。

心がけているのは、各ページで必ず重要な何かが起きることと、エンディングにサスペンスを持たせること。ページをめくりたくなるようにね。これは本にもウェブコミックにも当てはまると思う。このバランスを上手く取るようにしている。

Q. 物語の最後までプロットを作る方ですか?

A. 各話のクライマックスはわかっている。でもそこへ辿り着くまでの詳細は描きながら決めていく。

Q. 主人公のコーロン、仲間のアイアロン、アオガウアのデザインには何かモチーフがあったのでしょうか。

A. 好きなロボキャラやパワースーツをベースにした (笑)。前のバージョンを描いていた時は、物凄くディテールの込んだ絵で描いていたけど、あまりにも大変だったので、35ページでやめてしまった。だから、今回はシンプルなデザインを心がけたの。

アオガウアのデザインはアイアンマンのスーツが出発点だった。最終デザインは似ていないけど、ベースはアイアンマンよ。エイアロンはアステカ族のダンサーの衣装を参考にした。彼のヘルメットはダンサーが着ける鳥の羽のモチーフだね。

Q. 古代のローマ兵のヘルメットにも似てますね。

A. そう、戦士らしいデザインにした。羽は儀式で踊る戦士の衣装らしく。コーロンは… どのキャラだったか忘れたけど、好きなトランスフォーマーの頭をいくつか合わせて、それをシンプルにしていった。主人公なので、何度も描くキャラだろうから、わかりやすく、描きやすいデザインにしたの。彼は (忠義の民の中で) 最も一般的なデザイン。でもガンダムの脚が好きなので、ガンダムの脚にしてあげた (笑)。

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(コーロン、エイアロン、アオガウア/aquapunk.co)

 

Q. 影響を受けたアーティストは?

ポール・クレー (Metropolitan Museum of Art)

ポール・クレー (Metropolitan Museum of Art)

A. 私の背景はファインアート (美術) なのね。元はペインターだった。美術系の高校で油絵を勉強して、大学でイラストレーションを勉強した。好きな画家はポール・クレーマーク・ロスコ。コミックには向いてないけど (笑)、 (台詞ではなく) キャラの姿や風景で特定のフィーリングを伝えたい時、クレイやロスコなどのアーティストを参考にしている。

メイナード・ディクソンも好き。19世紀に米西部の風景画を描いていた画家で、地平線、空、雲、岩など、壮大な絵が多い。それに彼のスタイルはとても建築的だし、ドラマチックで面白い。そういう絵が好きね。

他は…カンプ・ケネディ (映像作家)。もちろん (マイク) ミニョーラも (笑)。あとジャック・カービィ。

マーク・ロスコ (Metropolitan Museum of Art)

マーク・ロスコ (Metropolitan Museum of Art)

 

Q. 『アクアパンク』の舞台を水中にしようと思った理由は?

A. オリジナルの言語を作っていた時、人魚の言語にしようと思っていたの。理由は覚えてないけど、クジラの鳴き声や、水中で録音された音をよく聞いていて。水中では全ての音が響くわけじゃないのね。例えば S の音は響かないから、その音は水中の言語の一部にはならないでしょう?何だろう。そういう事を考えるのが好きだったから、舞台は水中にしようと。

あと、水は未知の世界や、人間の無意識的な場所、夢、夢の世界など連想させるでしょう。いずれ舞台を陸に移したら、唐突な環境の変化が面白いだろうと思った。

2015.09.18.

 

アクアパンク〜最初の掟〜』第1巻の試し読みはこちらから。
原語版のウェブコミックは以下の URL からどうぞ。
http://www.aquapunk.co/

aquapunk_coverアクアパンク 〜最初の掟〜 第1巻 亡霊

作:LO
翻訳:吉川悠
ISBN:978-4-9907983-3-8
定価:1400 円+税

2015年11月15日発売予定

アマゾンで予約受付中!
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LO (ロー)

コミックアーティスト。

ロサンゼルス生まれ。

Los Angeles County High School of the Arts 卒業後、ニューヨークの School of Visual Arts に在学。学位の取得に励む傍ら、ビデオゲーム開発会社やコミック出版社で働き、インスタレーションアーティストとしても活動。2008年にアクアパンクの製作に取りかかる。好きな物は園芸、キャンプ、産業革命以前のテクノロジー、メカジャンルについて友達と語り合うこと。現在は米北西部に在住。